1-16.マリー・リーMary Lee-レインボーズThe Rainbows(モーガン・ロビンソンMorgan Robinson、ラリー・ロビンソンLarry Robinson)
54年12月レッド・ロビンRed Robinのシングルとして発売56年2月ピルグリムPilgrimのシングルとして再発売、60年3月ファイアFireのシングルとして再発売
「マリー・リーMary Lee」のイントロのピアノの音色を始めて聞くと、昔のティン・パン・アレーTin Pan Alleyの専門家が、連続ホームコメディのザ・ハニームーナーズThe Honeymoonersのアート・カーニーArt Carney風に、放り込まれた次のポップ・ソングの準備をしているところを思い浮かべるかもしれない。
しかしそれからドラムが入って、すすり泣くような、ジミー・スプルーイルJimmy Spruillに似たギターと、グループがいたるところで『ワダワダ』と歌う。ブリッジの真ん中でリードシンガーが飛び込んでくる粗削りなファルセットを聞くや否や、最高傑作を聞いたということが分かる。
グループ自体はすごい集団で、(いろいろな時に)マービン・ゲイMarvin Gaye、ドン・コベイDon Covay、ビリー・ストゥワートBilly Stewartなどのメンバーの中からリストアップしたようなものだ。
しかし、ボビー・ロビンソンBobby Robinson(レッド・ロビンRed Robinのオーナー)のオーディションを受けたレインボーズが契約したのは、2回目の時であって、1954年に最初にニューヨークを訪れた時には、レコーディングするにはあまりにお粗末だとロビンソンが言って追い返したのだ。
数か月練習したロビンソンの評価は変わった。
興味深いことに「メリー・リー」は『オールディー』として再発行された最初のドゥーワップでもあり、54年後半に初めて発売されたときには小さなローカル・ヒットで、1955年を通してゆっくりではあったが着実に売れた。1956年初め、とりわけ、フランキー・ライモンFrankie Lymon、プラターズthe Platters、クレフトーンズthe Cleftonesがロックンロール・ボーカル・グループの先駆けとなった時、ボストンが本拠地のプルグリム・レーベルPilgrim labelが、すぐに再発行するために「マリー・リー」とボビー・ロビンソンの4枚の他のレコード(スカーレッツThe Scarletsの「ディア・ワンDear One」など)を買い取った(あるいは借り入れた――このようなことには裏付けとなる書類はほとんどない)「メリー・リー」はその春にピルグリムが再発行した最初のレコードだ。