このボックス・セットは、この盲点をなくすのに役立ちそうだ。少なくとも、ドゥーワップが感じの良いという評判を得ている、アップビートで、良き時代の気取らない趣は、信じられないような素晴らしい歌から生まれている。
ロックンロールを調査した数百冊の本の中で、ドゥーワップを大したことのない変わったもの以上として扱ったのはほんの一握り(一例として、デーブ・マーシュDave Marshのザ・ハート・オブ・ロック・アンド・ソウルThe Heart Of Rock & Soul)だけだった。
ロックンロールの最も有名な歴史的組織のロック・アンド・ロールの殿堂the Rock and Roll Hall of Fameには、最初の殿堂入り達成者103人の中で3人の50年代ボーカル・グループが殿堂入りを果たしている。
それは、ドリフターズThe Drifters、フランキー・ライモンとティーネージャーズFrankie Lymon & The Teenagers、コースターズThe Coastersだ。
それにしても、ムーングロウズThe Moonglows、クローバーズThe Clovers、フラミンゴーズThe Flamingos、スパニエルズThe Spaniels等は、初期に殿堂入りを果たした者達の誰と比べても同じくらいヒット曲を出し、影響し、明らかに音楽面で達成したが、十分に検討されなかった。
ロックンロールの芸術的正当性を認め、称える協会にとっても、ボーカル・ブループ音楽はどういうわけか視界から外れてしまった。
ところで、すべてのR&Bグループが音楽の巨人というわけではない。女の子達と付き合ったり、好印象を与えるためにグループを作る子たちもいたし、未熟な演奏が不用意に旧式の録音装置に録音されたこともあった。しかし表面がどうであれ、その下には素晴らしい真珠が隠れていたり、最もその場しのぎで歌ったグループでも、本能的に自分たちの伝統様式には敬意を払っていた。インク・スポッツThe Ink Spotsやミルス・ブラザースThe Mills Brothersのポップ・スタイル、キャッツ・アンド・ザ・フィドルCats & The Fiddleのスイング・ジャズ・スタイル、あるいは、ゴールデン・ゲート・カルテットThe Golden Gate Quartetやソウル・スターラーズSoul Stirrersなどのアンサンブルのゴスペル・ハーモニーを利用してもしなくても、音楽が始まるとまじめになった。