ザ・ドゥーワップ・ボックス Ⅰー3

もちろん、ニューヨークはドゥーワップの最も重要な場所でも一番大切なものでもないし、過去にそうだったこともないが、重要でないと考える人に覚えておいてほしいのは、上記三曲はドゥーワップが進化した時にターニングポイントとなって、初めて人気が出たのは、イーストコースではなくウェストコーストで、バルティモア、フィラデルフィア、ピッツバーグ、ロサンジェルス、ニューポートニューズ(バージニア州)が、多くの最重要ドゥーワップ・グループにとっての本拠地だったということだ。もしこのCDのボックス・セットがイーストコーストの雰囲気があるとすれば、他の何よりもニューヨークがプロデュースした莫大な量のドゥーワップを反映したからだ。
ドゥーワップの歴史物語の他の要素は、熱狂的なファンの中で重要な意味を持っていて、例えば、ある曲をリリースするレコード・レーベルは、演奏それ自体とほとんど同じくらい重要であることが良くある。少数のレーベル(ジュビリーJubilee、ジョシーJosie、オールド・タウンOld Town、レッド・ロビンRed Robin、ホワーリンWhirlin’、ディスクDisk、ラマRama、ジーGee等)はドゥーワップ・グループに特化し、これらのレーベルがレコーディングするときには、特別な価値尺度を持っていた。

Jubilee Records USA1955 Josie Label Doo Wop 45 The Cadillacs SPEEDO / Let Me Explain VG | eBay

VARIOUS ARTISTS - Old Town Doo Wop, Volume 1 - Amazon.com MusicRed Robin Records: Great Labels Of The Doo Wop Era: VARIOUS ARTISTS:  Amazon.ca: Music

Various - The Best Of Whirlin Disc Records | Releases | DiscogsThe Rama Records Story - Rate Your Music

Gee Label Album Discography

オリジナル盤の価値、というより希少性もこの関連では大きな役割を果たしていて、シカゴのチャンス・レコードChance recordsのロゴのように伝説的なレーベルはすぐにファンの注目を集めるが、その理由はただ、第一級のドゥーワップであることがあり、オリジナルの45回転盤は見つけにくく、発売してから数年後には希少になるからだ。

The Chance Label
レコード・コレクターの全体像は、ドゥーワップの世界の風土病にかかったようなものだ。コレクターによっては、ボーカル・グループのレコードを個人アーカイブとして増やし、60年代、70年代にリリースされたより無名なレコードにどんどん高額のお金を支払い始め、すぐに1枚100ドル、500ドル、そして少数ではあるが1000ドルを超える例もある。1953年のレコード(45回転盤、いいかい、LPではない)1枚が最近18,000ドルで売れたそうだ。R&B/ドゥーワップのコレクターがどれほど熱狂的であるかを理解するために、ある日無名のシングルの(25枚入り)ボックスを見つけた紳士のケースを考えるのだが、彼はそれを他の音楽愛好家に分けるのではなく、24枚を壊して一枚だけ持っている。この結果、極度に貴重になった。幸いなことにほとんどのドゥーワップ・コレクターはこのようなタイプの行動をとることは無く、どちらかと言えば、ドゥーワップの歴史の知識を持ち寄ってくれるが、これは利己的な気持ちではなく貢献してくれたものだ。
しかしこんな小難しいことや細かいことを言わなくても、流行った後20年、30年経った後でも、これだけ多くの人にとって大切である本当の理由は、ポピュラー音楽のなすべきことを単にしているからで、それは笑顔にさせるからだ。もっとも純粋な形のドゥーワップ・ミュージックは、単純で、純朴で、楽しく、ロマンティックな、ほとんど精神的なもので、政治的発言はなく、リズムやビートで酔った状態にするわけではなく、歌詞の意味を理解するために違法なものを吸う必要はない。元々は若者を対象としていなかったが、その精神や発言内容はそうなったし、最も分かりやすい音楽要素になった。様々なところで分析されたり解説されたりしているが、人生の特別な瞬間に関する思い出にふけったり、倒れるまでひたすら踊りたいかどうかにかかわらず、ドゥーワップはそれ自体、聞いて楽しめるように作られている。