この映画は撮影後の編集作業に入り、感謝祭の週末過ぎに封切り予定で、エルビスが帰路に着くまでには、「ラブ・ミー・テンダー」を凌ぐ次の映画製作が始まっていた。
エルビスの映画はドラマ中心であまり音楽は無く、モノクロで撮影された。アニメ制作者から映画監督に転身したフランク・タシュリンFrank Tashlinは、ガーソン・カニンの小説「ド・レ・ミDo Re Mi」に基づいた20世紀センチュリー・フォックスの映画を急ごしらえで制作した。
アルコール中毒の広報担当がギャングに雇われ、ガールフレンドを6週間で話題のトップ歌手にする話で、それができないとひどいことになる。もちろん、これはエルビスが当時のポップ・ミュージックの業界にどっぷり浸からなければならず、当時人気のあったアーティスト達の登場する機会がふんだんにあることを意味する。トム・イーウェルTom Ewellが広報担当、ジェーン・マンスフィールドJayne Mansfieldがガールフレンドを演じ、
ファッツ・ドミノFats Domino、プラターズThe Platters、
リトル・リチャードLittle Richard、ジーン・ビンセントGene Vincent、ブルー・キャップスThe Blue Caps、
そのほかに今ではほとんど忘れられてしまった数人(トレニアーズThe Treniers、チャックルスThe Chuckles、ジョニー・オーレンJohnny Olenn)が、本人役で登場し、最新レコードを演奏した。
リチャードの歌の一曲から映画のタイトルを「女はそれを我慢できないThe Girl Can’t Help It」としたが、一方で、ある程度安っぽい軽快コメディであるものの、他方では、ロックンロールが本領を発揮する輝かしいタイムカプセルでもある。音楽シーンはどれも鮮やかに撮影されて(映画がカラーだったことも良かった)いて、ジーン・ビンセント&ブルーキャップスGene Vincent and The Bluecaps、リトル・リチャードLittle Richardは、特にドキドキするような演奏だった。特に印象的な方法で当時の熱狂ぶりを表すシーンは、イーウェルTom Ewellの家政婦がテレビのついている部屋で働いていた時、エディ・コクランEddie Cochranが登場してトゥエンティ・フライト・ロックTwenty Flight Rockを演奏するところだ。