ロックンロール誕生 237

1955年、ハリウッドは学校内での少年非行の増加を描いた映画『ブラックボード・ジャングルBlackboard Jungle』を公開した。

公開直前の土壇場で、監督は映画の最初と最後にロックンロールの曲（ビル・ヘイリー＆ヒズ・コメッツBill Haley and His Cometsの）「ロック・アラウンド・ザ・クロックRock Around the Clock」を付け加えた。

この映画は、ロックンロール・ミュージックがアメリカの少年非行の原因であることを暗示している。映画館の外では、ティーンエイジャーと当局との間で暴動が起きる。

アラン・フリードは、この音楽をぶち壊そうと、少年非行をロックンロール・ミュージックのせいにしたとして、ハリウッドを公に非難した。

50年代、アメリカでは少年非行が増加したが、それはロックンロール・ミュージックのせいなのか、それとも50年代の政治的・社会的環境のせいなのか？第二次世界大戦後、アメリカのティーンエイジャーの役割は変わった。50年代の子供たちは、そのような50年代の時代の変化の中で成長することによって悪影響を受け、10代の行動はその現実を反映していたと考えているに違いない。

50年代の子育ては、第二次世界大戦前の子育てとは大きく異なっていた。戦前、子供たちは思春期や青年期になると、特に不況期には家族を経済的に支えるという点で、常に責任感を持つように教えられてきた。

今、男性は戦争から戻り、教育、経済、社会な面でチャンスに恵まれている。

50年代、スポック博士Benjamin McLane Spockはアメリカの家庭で広く読まれていた。スポック博士の著書『ベイビー・アンド・チャイルド・ケアBaby and Child Care』は、50年代前半に聖書に次ぐベストセラーとなった。

彼はこの本に続いて、「スポック博士の育児書The Common Sense Book of Baby Care」という別の本を出版した。

精神分析の影響を受けた彼は、親にもっと柔軟に、愛情深く子供に接し、子供を独立した個人として扱うよう勧めた。スポック博士は親たちに対して、かなり厳しい世の中で子供たちが強く自立できるように準備する必要があると説いた。彼は、子供が即座に満足させることを親が奨励し、寛容になり過ぎたとして非難された。自分の行動に責任を持とうとしないナルシストなアメリカ人を何世代にもわたって作り出したのはスポックだと、多くの人が信じている。

戦争が終わり、ほとんどのアメリカ人は繁栄と物質主義の考え方に偏っていた。50年代には、親は子供たちに良い教育を受けさせ、幸福につながるようなあらゆる活動に取り組ませるようになっていた（第二次世界大戦前の子供たちの育て方とはまったく異なっていた）。意識しようが意識しまいが、50年代のティーンエイジャー世代は、周囲のこうした現実（いいことも悪いことも）のすべてから大きな影響を受けざるを得なかった。ロックンロール・ミュージック（多くの大人たちは危険だと考えていた）もまた、この世代の若者たちが50年代の現実から逃避するための楽しい方法の一つだった。