ザ・ドゥーワップ・ボックス　Ⅰー１１８

４－７．ゼアリズ・ア・ムーン・アウト・トゥナイトThere’s A Moon Out Tonight－カプリスThe Capris（アル・ストリアーノAl Striano、ジョー・ルシサーノJoe Luccisano、アル・ジェンティルAl Gentile）

５８年１０月プラネットPlanetのシングルとして発売、６０年１０月ロスト・ナイトLost Niteのシングルとして再発売、６０年１２月オールド・タウンOld Townのシングルとして再発売：R&B１１位、ポップ３位

このヒット曲の裏にある話は、ドゥーワップの言い伝えの小さな部分になり、レコード・コレクターやこの音楽ジャンルが６０年代初期にどう結び付くかを示している。まるであの時代に何度も再生された台本に従うかのように、クイーンズのオゾンパーク出身のグループがハイスクールで集まり、有名なストリート・コーナーで練習した。『ある日、彼らはある男と会った』が、この場合は二人の男で、１９５８年後半にリード・シンガーのニック・サンタマリアNick Santamariaが書いた曲、「ゼアリズ・ア・ムーン・アウト・トゥナイト」をレコーディングした。

(現在の作成者クレジットに彼の名前がないのには、また別のいささか典型的な話があって、それはこの解説の範囲を超え、音楽産業のあまりロマンティックでない部分だ。)この曲のニューヨークの小さな会社のプラネット・レコードPlanet Recordsに売却され、リリースされたが、ほとんど売れなかった。
１年半が経った。グループは解散して違う道を求めた。ニューヨーク市にある地下鉄のアーケードに下りると、アービング・スリム・ローズIrving “Slim” Roseという名前の男が小さなお店を経営して、たまたま、特に黒人R&Bボーカルグルの４５回転レコードを売っていた。

従業員の一人のジェリー・グリーンJerry Greeneが、無名のプラネット・レコードPlanet recordsのシングルを顧客から返品商品として買い取り、DJのアランフレデリクスAlan Fredericksの所に持ち込み、彼のナイト・トレインNight Trainという番組で放送された。すぐに反応が来て、人々がこのレコードを探しに、そのお店に殺到した。
結局、グリーンと数名の友人がマスター盤を買うことができ、その後それをオールド・タウン・レコードOld Town Recordsのハイ・ワイスHy Weissに貸した。そのレーベルで、トップDJのマレイ・ザ・ケー・コーフマンMurray “the K” Kaufmanの支援もあって、このレコードは６１年初めに１位になったが、レコーディングしてから２年半後のことだった。

ジェリー・グリーンは最終的にロスト・ナイト・レーベルLost Nite recordsと、コレクタブルズ・レーベルCollectables labelを経営し、５０年代のオリジナル・レコードを１ドルで手に入るようにした。

カプリスはすぐに再結成してオールド・タウン・レコードOld Town recordsでさらに数曲録音して、「フェアー・アイ・フェル・イン・ラブWhere I Fell In Love」と「ガール・イン・マイ・ドリームズGirl In My Dreams」をマイナー・ヒットさせたが、１９６３年までにやめてしまい、世間も２０年近く彼らを聞こうとはしなかった。

その後１９８０年に、このディスクの最後から２番目で聞けるように、彼らのキャリアは劇的に復活した。