１－４． ジーGEE－オリオールズThe Orioles(ウィリアム・デービスWilliam Davis／ビオラ・ワトキンスViola Watkins)
５３年６月ラマRamaのシングルとして発売：R&B２位、ポップ１４位
ここで永遠にドゥーワップやロックンロール・ボーカル・グループと通例結び付けられる名前をここで紹介しよう。伝説的なジョージ・ゴールドナーGeorge Goldnerだ。
ヒット・レコードに対する誰にも負けない耳を持った(もし教育は受けていなくとも)輝かしいレコード人間、ゴールドナーGoldnerはティコTicoというラテン音楽レーベルを1948年に設立してビジネスを始め、ティト・プエンテTito Puente、マチートMachitoなどのアーティストと契約し世界に紹介した。
地元(ニューヨーク)のプエルト・リカンの女性と結婚し、ニューヨークのたくさんのダンスホールと関係のあったゴールドナーGoldnerは、50年代初期にいち早く情勢を察知して、ラテン社会の若い子供たち(まだ「ティーネイジャー」とは呼ばれていない。)の多くは、最新のサンバやルンバだけでなく黒人リズム＆ブルースのレコードを聞いて(買って)いたことに気づいた。常に起業家精神旺盛のゴールドナーGoldnerは新子会社のレーベル（Rama）を1953年に立ち上げ、若い黒人ボーカル・グループのファイブ・バズThe 5 Buddsと一緒にレーベルを始めた。
その春遅くなって、以前ブルース・シンガーFat Man HumphriesのバックをThe 4 Notesという名前で数曲演奏し、10分で作った「ジーGee」という軽く流行りやすい、単純な曲を持ってきたグループを連れてきた。
このレコードは’53年にリリースされ、ゆっくりと売れ始めた。最初に関心を持たれたのはB面の「アイ・ラブ・ユー・ソーI Love You So」(この曲は結果として、１９５８年に最初に成功したロックンロールのガール・グループのヒット曲になる。)だけだった。しかしその時奇妙なことが起きたのだ。
ウエストコーストのディー・ジェイのディック・ハギー・ボーイ・ハグ Dick “Huggy Boy” Huggにガールフレンドがいて、その子は「ジーGee」が好きで、ハグHuggが屑だと思って捨てた後でそれをごみ箱から取り戻したのだ。その時放送中だったHuggは、この曲のレコードをもう一枚つかみ、彼女の愛情を取り戻そうとしてしぐさを交えて何度も何度もかけ始めたのだ。
二人がどういう結末になったかは分からないが、彼がかけたレコードに何が起きたかはよく知っている。それはウエストコーストで早速売れ出し、Goldnerは全国的に宣伝し直した。1954年初め――最初のリリースから9か月後――までに勢いを増し、ポップ、R&Bの両チャートで上位に上った。かつて1951年にドミノスThe Dominoesが「シックスティ・ミニッツ・マンSixty Minute Man」でしか成し遂げたことのないすごいことだ。
洗練されているといえない歌詞のついた、単純で陽気な曲は誰でもレコーディング―そして成功―できるという考えを、コーズThe Chordsの「シュ・ブームSh-Boom」と一緒に作り出した。
歌詞は単にグループの青春時代を反しただけだ。
翌年クロウズThe Crowsは、シングルをもう数曲ゴールドナーGoldnerのところでレコーディングし、それから消えて行った。1年休んだ後、ゴールドナーGoldnerはいみじくもジーGeeという別のレーベルで、若い黒人ボーカル・グループとともに舞い戻ることになる。それがフランキー・ライモンとティーネージャーズFrankie Lymon ＆ The Teenagersだ。
気になる人たちにとっては、ゴールドナーThe GoldnerはクロウズThe Crowsの曲に因んでレーベル名を付けたかという疑問がある。彼の最初のジーGeeのリリースは実際1954年4月で、ちょうどその時この曲がチャート入りした。「ジーGee」は「ジョージGeorge」か「ゴールドナーGoldner」を表したのだろう。