ザ・ドゥーワップ・ボックス Ⅰー31

私は小学校の時、このような子供でレコードに夢中になり、ヒット・パレードを追いかけた。新しい音楽の先駆けとなる数少ないレコードがあったものの、とてもまれでアップテンポな曲であり、『やかましくて、下品なレコード』として見下していた大人からは『珍奇な』ものとして片づけられていた。私はもっと真剣で信頼できるものを探していた。1954年のある晩、熱くなった真空管がいっぱい入っている慈善バザーで買ったエマーソン社製の卓上ラジオEmerson Table Radioのダイヤルを合わせて、外部からの信号を受信しなければならなかった。

File:Vintage Emerson Table Radio, Model 587-B (Metal Grill), Broadcast Band  Only (MW), 5 Tubes, Circa 1950 (15965368579).jpg - Wikimedia Commons

夜の暗闇の中にいて、明かりはラジオダイヤルの橙黄色の光だけの時、感激で背筋がぞくぞくする音を聞いた。ボーカル・グループが『ポップ』音楽とは全く異なるイントロを歌っていた。リード・ボイス――不気味な、懇願するようなサウンド――は、驚きのあまり、凍り付いて動けなくなる魔法の言葉を発した。

苦悩したバラードが銀河系のどこか向こうからラジオを通してきて、この未知のものこそが一生をかけて探求するものだと知った。これが純粋な魔法であり、失うことを恐れた。曲が終わるとコマーシャルになり、おそらくこれは全部想像上のものでしかないと思った。一晩中寝ないでいると、魂に届いたプライベート・メッセージのように、ついにその曲が再び流れ、ペンギンズThe Penguinsが「アース・エンジェルEarth Angel」を歌っていることが分かった。

Hey Senorita / Earth Angel (Will You Be Mine) by The Penguins (Single,  Doo-Wop): Reviews, Ratings, Credits, Song list - Rate Your Music

「アース・エンジェル?」「ペンギンズ?」これは、どのような魔法のサウンドなんだろう?

この『サウンド』を小学校の子供たちに熱心に説明したけど、ポカンと見るだけだった。僕が何を話しているのかわからず、僕との距離はどんどん開いた。自分は間違っていないと分かっていて、『彼ら』(大人であれ、子供であれ)は、新しい文化に疎いか、あるいは、その瞬間に『敵』にさえなった。そのうちにヒットする曲もあったが、僕は自分の信念を捨てることは無く、ドゥーワップを信じていた。節約をして、ついにはそれを買うと、このレコードが流行り出し、ついにはヒットして全国トップ10に入り、そこでクリュー・カッツCrew-Cutsによる『ポップ』なカバー・バージョンより優れていたので、マイナー・レーベルでもメジャー・レーベルのカバー・バージョンよりうまく戦うことができるという大きなメッセージを、レコード業界に送った。

The Crew Cuts | Spotify

たぶん今「アース・エンジェル」を聞くと、むしろおとなしく聞こえるかもしれないが、それがリリースされた当時は、流行している標準からするととても驚くようは、耳障りな曲だった。

このレコードに勇気づけられてボーカル・グループが結成され、既に自分の演奏活動や基準から外れるかもしれないサウンドに取り組んでいる者達すべてに希望を与えた。これは、1955年から1963年までの『ボーカル・グループ・バラード』サウンドの基本形の標準を形成するもので、画期的なレコードであり、ロックンロールの大事件であった。歴史の流れを変えたのだ。

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