日: 2025年12月29日

 

それにしても、サム・フィリップスSam Phillipsは、いったい何をしていたのだろう？

プレスリーで儲けたお金の一部を、全員女性アナウンサーのラジオ放送局KSHEに、それ以上を友人の企画であるホリデー・インHoliday Innというホテル・フランチャイズに投入し、そしてもちろん豪華な本社も建設していた。

スタディオは10月まで準備ができていなかったが、自分で見つけた二人の新人アーティストに大きな期待を抱いていた。カール・マンCarl Mannはミシシッピ州ジャクソン出身で、16歳の清潔感のある顔だったが、巡業の経験がありギターの技術もまずまずで、それに合わせる強力なテナー・ボイスを持っていたので、サムはその潜在力をすぐに見抜いた。

フィリップス・インターナショナルPhillips Internationalにとって良い仕掛けもあり、それはポップのスタンダードをロック調に仕上げるというものだ。マンの第1号はなめらかなナット・キング・コールのナンバー「モナ・リサMona Lisa」のカバー・バージョンをロック調に仕上げるという手法だが、それは功を奏した。ライブでは、10代の若者たちがマンに夢中になった。

サムは何か新しいものを見つけたようだった。ヒットを飛ばしてほしいとサムが望む別のアーティストは、まったく別ものだった。チャーリー・リッチCharlie Richは暴走族みたいで、ちょっと酔っていたが、毎晩働いているバーで、ピアノを弾きながらスタンダートやジャズを歌って、曲を売り込む能力は驚異的だった。

妻のマーガレット・アンと一緒に曲も作り、オリジナル曲をかなりたくさん持っていた。

リッチもフィリップス・インターナショナルと契約していたが、サムはデビューにぴったりのタイミングと曲を待っていた。しかしそこで働いていた人達によると、何かがサン/フィリップス・インターナショナルthe Sun / Phillips International の事業から無くなってしまった。彼らが失ったものは、タレントよりも大事な、スタディオ内にある何かだった。サムは、まだジェリー・リー・ルイスJerry Lee Lewisを信じていたが、マリオン・ケイスカーMarion Keiskerが出て行ったあとは、今までよりはるかにラジオ放送局の建設と売買に関心を持つようになった。

夏は流行を試す機会になった。ティーンエイジャーは学校が休みになり、多くの生徒は学校がある時よりも長く働ける仕事に就くので、使える収入が増えレコードに費やす者もいる。しかし買うレコードの種類が変わっていた。例えば、チャック・ベリーChuck Berryは、まだほとんどの場合(イタリア訛りの失敗作「アンソニー・ボーイAnthony Boy」 は除く)、良いレコードを作っていて、1959年最初のリリースはティーンエイジャーの良くできたプロテスト・ソング「オールモスト・グロウンAlmost Grown」で、R&Bチャートは3位だったが、ポップ・チャートで32位止まりだったし、B面の「リトル・クイーニーLittle Queenieは80位に終わった。