このひどい映画がイギリスに来るとティーンエイジャーがヘイリーを見られるようになったが、ヘイリーは肥満形で、おでこの真ん中におかしな細いカールをして何曲も演奏していた。
アメリカでは、この映画はヘイリーの終わりの始まりだったが、イギリスの若者はただただ当惑するだけだった。ファッツ・ドミノFats Dominoの「ブルーベリー・ヒルBlueberry Hill」がリリースされた(「『ブルーベリー』のような楽しい曲がファッツ・ドミノのようなひどい声によってめちゃくちゃにされてしまうことは、大いに残念なことに思われる」:再び、NME誌の記事)。
本当に侮辱的だったのは、「恋は曲者Why Do Fools Fall in Love」だった。フランキー・ライモンとティーンエイジャーズFrankie Lymon and The Teenagersが若い黒人であるために、この曲についてイギリスのマスコミからひどいことを言われたが、それでも、(白人でイギリス人の)スターガザーズThe Stargazersというプロのコーラス・グループがBBCテレビ番組で演奏した時、音楽の分かる者なら、この曲からかなり立派なものにできることが誰にも分かっただろう。
リトル・リチャードLittle Richardについては、どういうわけかイギリスのレコード会社がトゥッティ・フルッティTutti Fruttiを採用したのだが、彼の歌を聞くチャンスは無かった。
ある新聞は、彼のことを「アニメのグロテスクな黒人」と例えたのだ。
スキッフルの話に戻ろう。バイパーズThe Vipersはパーロフォン・レコードParlophone recordsと契約したが、プロデューサーのジョージ・マーティンGeorge Martinが最初のシングル、「アーンチュー・グラッドAren’t You Glad」と裏面「ピック・ア・ベイル・オブ・コットンPick a Bale of Cotton」をレコーディングした。
それはノベルティ・ソングだった。ティーンエイジャーは、やがてクオリティとは何かを知ることになる。アメリカではイギリスの状況を誰も気にせず、イギリスではロックンロールでアメリカと競うつもりは全く無かった。