日: 2025年9月20日

この中年の黒人家政婦は音楽で興奮して感情を抑えきれなくなったため、イーウェルを連れてきてテレビを見させたのだ。

ロックンロールとは何か、聴衆はどんな人かということに関して、会議もマーケット・リサーチもなかった。誰もが分かっていたのは、これは一時的流行だから、ピークに達する前に封切らなければならないということだ。エディ・コクランは、「トゥエンティ・フライト・ロック」をリリースさえしていなかったが、ほとんど問題ではなかった。

エディはティーンエイジャーの時からハリウッドの辺りをうろついてが、15歳の時からレコーディングをしていて、ハンク・コクランHank Cochranと組んだコクラン・ブラザースThe Cochran Brothersとしてデビューした。

ハンクはエディとは血がつながっておらず、後にカントリー作曲家として大成功する。エディはカリスマ的演奏者というだけでなく、スタディオの達人で、しばしばレコーディングやオーバーダビングをして、自分ひとりでバンド全体を作ってしまった。ニック・アダムスNick Adamsは、エルビスのツアーに同行してショーのオープニングで物まねやコメディを披露していたが、このニックのように、エディはロックンロールを使って、ハリウッドの群れから傑出した存在になった若者だった。

ロックンロールは一時的流行だったかもしれないが、その時は紛れもなく成功していた。その証拠の一つが、その夏に、「ザ・フライング・ソーサー・パート1&2　The Flying Saucer Parts1 and 2」を、ブキャナンとグッドマンBuchanan and Goodmanという二人のニューヨーク音楽業界の有名で個性的な人間がリリースしたことだ。

二人は、ある日仕事の待ち時間に、他のレコードの一部を使って、空飛ぶ円盤の着陸という架空のニュース放送のようなレコード制作のアイデアを思い付いた。ディッキー・グッドマンDickie Goodmanは、ジョン・キャメロン・キャメロン（スター・ニュースキャスターのジョン・キャメロン・スウェイジJohn Cameron Swayzeを思わせる）の役を演じ、宇宙人の飛行船が地球に着陸したことを伝えるというものだ。

もちろん、宇宙船による地球への来訪者の最初の言葉は、「ア・ウッ・バッパ・ルー・バッパ・ワッ・バム・ブームA-wop-bop-a-loo-bop-a-wop-bam-boom」であり、当然、ブキャナンとグッドマンはレコードの使用許諾を申請していなかった。最初はおそらくディスク・ジョッキー向けのジョークとしてなされたのだろうが、ティーンエイジャー達はすぐに自分のレコードを欲しがったので、二人はルニバース・レコードLuniverse recordsというレーベルを立ち上げ、レコードを製造した。著作権業界で最も恐れられている弁護士の中には二人を探す者もいたが、二人は公の場に出なかった。ところが突然奇妙なことが起きた。例えば、ドゥーツィー・ウィリアムズDootsie Williamsが、ペンギンズThe Penguines のアース・エンジェルEarth Angelは、何か月も売れていなかったのだが、この曲の中で使われた後売れ始めたことに気付いた。

流行していなかった他の曲も同じだった。結局、パロディ法令の下で、それは公正な使用であると判事が判断し、ブキャナンとグッドマンは次にいわゆる無断使用レコードを他にもたくさん作った。しかしながら、それはばかばかしかった（そして100％純粋にばかばかしかった）にもかかわらず、フライング・ソーサーは重要なことを証明した。それは、使われているレコードを良く知らなければ誰も買いたくならないし、そして、良く知っているからこそパロディを面白いと思ったということだ。この曲は、ロックンロールの聴衆だけに対して、直接語りかけているのだ。