フリードには問題がなかったかもしれないが、アメリカ社会には問題があるという懸念が高まっていた。
映画の「暴力教室The BlackBoard Jungle」はそれを扱おうと試みたし、それよりも共感を得た映画は、おそらく「理由なき反抗Rebel Without a Cause」だったろう。
「暴力教室」は、必ずというわけではなかったが、いくつかの劇場で暴動になったために上演を差し止めた映画館チェーンもあり、手に負えない子供たちの話は全国の公立学校で切実な問題だった。最も象徴的な場面では、リチャード・キーレイRichard Kiley演じる教師が、スラム街にある教室の生徒たちに接近しようとして自分のレコードを持ち込んだところ、生徒たちは教師の趣味を馬鹿にしただけでなく、レコードをたたき壊したのだ。
「理由なき反抗」にはロックンロール(それどころかいかなる音楽も)がなく、ロサンゼルスの心理学者ロバートMリンドナー Robert M.Lindnerによる1944年からの実話に基づいているが、主要な3人のティーンエイジャーは感動的だった。
ジェームズ・ディーンJames Dean演じる17歳の混乱しているジムは、街にやって来たばかりで、公然と酔っ払って警察にしょっ引かれた。
警察には、サル・ミネオSal Mineo演じるプラトンPlatoというあだ名を持ち、頭が良いが混乱しているジョンと、ナタリー・ウッドNatalie Wood演じるジュディがいた。
この3人は高校ではアウトサイダーであり、親との問題を通じて結びつき、ドラッグ・レースなどの反社会的な行動を起こし、その結果、別の不良少年を殺してしまう。映画はかなりハッピー・エンドだが、その映画の破滅的メッセージは、ティーンエイジャー達の行為は家庭での教育問題が原因であることもあり、子供の振る舞いは親の責任だということだ。この考え方はアメリカのほとんどの人にとってかなり過激なもので、ティーンエイジャー達が群れを成して何度も何度もこの映画を見るという事実には驚かされた。ティーンエイジャーが何度も映画を見た理由のいくらかは、ジェームス・ディーンやナタリー・ウッドNatalie Wood(そして多少はゲイのサル・ミネオSal Mineo)を見るためだったという事実は、大した問題ではないようだ。そしてもちろん語られない部分もある。映画の中では端役以外で黒人を見ることはまずない(グレン・フォードGlenn Fordの暴力教室に登場する不良少年の一人は若き日のシドニー・ポワチエSidney Poitierが演じていた)のだが、ロックンロールは、社会的に見れば黒人かそれと大して変わらない低所得白人層のものだったようだ。