それでも、ヘイリーの成功によって、わいせつ危機と白人の若者が黒人のレコードを買うという問題に対する一つの解決策が見いだせたのだが、それがカバー・バージョンだった。
これは、他の人のレコードを録音し直すという業界用語で、その歴史はほとんどの人がレコードによって歌を聞く以前の1920年代という大昔にさかのぼる。コーズThe Chordsの「シュブーンSh-Boom」は、素晴らしいし受けそうだが、それでいて扱いにくい曲なので、マーキュリー・レコードMercury recordsは白人グループのクリュー・カッツThe Crew-Cuts(以前の名前はカナデアーズThe Canadaires)にカバー・バージョンを録音させ、危うくコーズのバージョンを打ち負かすほどヒットした。
危うく、と言ったのは、両方ともトップテン入りし、クリュー・カッツ版は1位になったのだ。ルース・ブラウンRuth Brownは、この夏に「オー・ホワット・ア・ナイトOh, What a Dream」というかわいい曲を、チャートに載せている。
パティ・ペイジPatti Pageがすぐにカバーしたがヒットしなかった。
これまでのところ、カバー・バージョンは脅威ではなかった。しかし、それはすぐに変わることになる。もちろん、手に負えないアーティストに対処する方法は別にあり、クライド・マクファターClyde McPhatterは5月に徴兵されたのだ。
幸いにもリリース可能な録音素材があったので、ドリフターズThe Driftersは影響を受けなかった。
というのは、アトランティックはマクファターをグループから外し、ソロ・アーティストとしてレコーディングをスタートさせ、グループにはその代わりに、声の似ているリトル・デイビッド・ボーガンLittle David Baughanを入れたのだ。