アーメットAhmetとネスヒNesuhiのアーティガンErtegun兄弟は、ここで大いに活躍できると考え、ハーブ・エイブラムソンHerb Abramsonとトム・ダウドTom Dowd（まだナショナル・レコードNational recordsに所属していた）、エイブラムソンの手ごわい妻のミリアムMiriamを、アトランティック・レコードAtlantic Recordsに引き込んだ。
何しろ、ナショナル・レコードは分裂していて、エイブラムソン夫婦とダウドは気が付いてみると、驚くほど準備不足のニューヨークにあるレコード会社に所属していた。アーメット兄弟の膨大なレコード・コレクションを売却することによって資金を調達し、ミュージシャンが録音を拒絶した1947年のペトリロ・ストライキPetrillo strikeにちょうど間に合うように、リッツ・ホテルRitz Hotelにオフィスを構えた。
すぐに、ホテル・ジェファーソンthe Hotel Jeffersonにあるもっと質素な部屋に引っ越した。ジャズ、朗読による物語（あるときアーメット・アーティガンはビルボード誌に、シェークスピア全集を78回転でリリースする予定だと話した）、そしてカントリーでさえ、彼らは何でもいいからどんどんリリースしたが、それから幸運なことが起きた。ある流通業者が泣きついてきて、スティック・マクギーStick McGheeの「ドリンキン・ワイン・スポディオディDrinkin’ Wine Spo-Dee-O-Dee」というブルースのレコードがヒットしたのだが、十分にレコードを確保できず、アーティガンに助けてもらえないかということだった。
アーティガンがニューヨークでただ一人知っているブルース・アーティストがブラウニー・マクギーBrownie McGheeだったので、見つけ出して、その件について尋ねた。
スティック・マクギーはブラウニーの弟で、たまたまハーレムにあるブラウニーの家に訪れていることが分かった。すぐにセッションが行われ、アトランティックの初ヒットとなった。
２曲目のヒットは、デトロイトのストロール街から出てきた。ザ・フレーム・ショー・バーthe Flame Show Barはデトロイトで圧倒的に名高い黒人ナイトクラブであり、そのため、デューク・エリントンDuke Ellingtonは、オープンから数か月間以内に演奏したほどだ。
デュークは、そこで聞いた若いボーカリスト、ルース・ブラウンRuth Brownに非常に感動した。
ルースはラッキー・ミリンダ―Lucky Millinderのバンドと一緒に演奏していて、エリントンはルースをボイス・オブ・アメリカthe Voice of Americaのジャズのディスク・ジョッキーであるウィリス・コノバーWillis Conoverに紹介し、コノバーはさらにハーブ・エイブラムソンHerb Abramsonに紹介した。
