3-3
より多くの独立系レコード・レーベルがリズム＆ブルースやロックンロールのレコーディングを始めるにつれて、このスタイルの音楽を聴きたい、買いたいという白人ティーンエイジャーの間で人気が高まっていった。大手レコード・レーベルは、独立系レコード・レーベルよりも、全国レベルでロックンロールのレコードを宣伝・流通させるための資源（資金）をたくさん持っていた。しかし、ロックンロール・ビジネスに参入することを決めても（ドゥーワップの歴史を参照）、これらの大手レコード会社は10代の白人市場をターゲットにする用意ができていなかった。
初期の頃、大手レコード会社はカバー・レコード（黒人のレコードの曲を白人アーティストにレコーディングさせた）で反撃した。1957年までには、白人のティーンエイジャーがオリジナルのリズム＆ブルースのレコードを好むようになったため、黒人のレコードはカバー・レコードの売り上げを上回るようになった。この黒人音楽は、1949年にビルボード誌によってリズム＆ブルースと再定義されたにもかかわらず、白人文化圏では依然としてレースあるいはセプタ・ミュージックのままだった。白人のティーンエイジャーは、ほとんどの白人の大人がこの音楽を拒絶していることを知っていた。1955年から1958年まで、白人ティーンエイジャーがロックンロール・ミュージックを求めたため、リズム＆ブルースとロカビリー・ミュージックのレコードを出したこれらの独立系レコード・レーベルは、レコード・ビジネス市場を支配し、大手レコード会社は劇的に凋落した。「カバー・レコード」は、基本的に黒人のレコードを白人がコピーしたものだった。大手レコード会社は、40年代後半から50年代前半にかけて人気のあった白人ポップ・アーティストやクルーナーと契約し、黒人の音楽をカバーさせた。当初、パット・ブーンPat Boone、マクガイア・シスターズThe McGuire Sisters、ペリー・コモPerry Como、クルー・カッツThe Crew Cuts、ジョージア・ギブスGeorgia Gibbs、ゲイル・ストームGale Storm、ダイアモンズThe Diamondsなどの白人カバー・アーティストたちは、オリジナルの黒人レコード売り上げを上回っていた。
例えば、パット・ブーンは「エイント・ザット・ア・シェイムAin’t That A Shame」のレコードを、オリジナルのファッツ・ドミノFats Domino recordのものよりもたくさん売った。
マクガイア・シスターズは「シンシアリーSincerely」のレコードを、ムーングロウズThe Moonglowsのオリジナル盤よりも多く売った。
クルー・カッツはコーズThe Chordsのオリジナル盤よりも「シュ・ブームSh Boom」のレコードを多く売った。
しかし、このやり方は成功したとはいえ、白人ティーンエイジャーの購買力が増したため、数年しか続かなかった。1957年のダイアモンズの「リトル・ダーリンLittle Darlin」は、黒人のオリジナル・レコード売り上げとチャートを上回った最後のカバー・レコードとなった。
1955年にロックンロールが誕生すると、白人ティーンエイジャーは、黒人音楽を買う必要性からリズム＆ブルースを支配するようになった。白人ティーンエイジャーは、オリジナルの黒人アーティストを求め、カバー・レコードを拒否した。最後のカバー・レコードのオリジナルは、モーリス・ウィリアムスMaurice WilliamsとグラジオラスThe Gladiolasが1957年にエクセロ・レコード・レーベルthe Excello record labelで録音した黒人の曲だった。エクセロはテネシー州ナッシュビルの非常に小さなレーベルで、全米でレコードを大々的に流通させる資金はほとんどなかった。モーリス・ウィリアムスは、エクセロ・レコードからニューヨークのマーキュリー・レコードMercury Recordsに「リトル・ダーリンLittle Darlin’」というレコードを送り、リースしてくれることを期待した。