ドゥーワップの私の個人的な思い出は、両方とも、ジョー・ペシJoe Pesciがうまく表現している「ガキ」の時ではなく、1980年代にマレー・ヒル・レーベルMurray Hill labelからドゥーワップの再発行物を編集しているときの話だ。
オリオールズthe Oriolesのオリジナル・レコーディングを選集に入れ、最初(5枚組LP選集に写真が1枚でライナーノーツは無かったので、私の最初の、と言える)のR&Bボックス・セットを完成させたばかりだった。
マイアミ・ビーチの浜辺のどこにでもありそうなバーで、未明の2時か3時に座っていて、手頃な価格のレコード・レーベルの裕福なオーナが一緒だった。そのセットについて話していて、オリオールズThe Oriolesは誰か、(ボックス・セットは言うに及ばず)レコード・アルバムを買う人がいるのはなぜかをその人に話そうとした時、中年の平凡な白人女性のバーの主人が、ふと耳にして「うわー。オリオールズ。それ、ソニー・ティル!」という趣旨のことを叫んだ。それから急に「知るには早すぎる」という詩で割り込んだ。彼女は決してホイットニー・ヒューストンのような人ではなかったが、突然割り込んできたことは私たち以外にとってむなしくても、私の友人に対して彼女が示した反応の印象は強烈だった。すぐにドゥーワップ・レコードをプロデュースし始めたり、くしで髪をとかしたりしたわけではなく、後になってこの事件を何回も持ち出したので、ソニー・ティルとオリオールズSonny Til &The Oriolesについてきっと忘れないだろう。
誰かがオリオールズを覚えていたことで涙を流し、感無量だったし、カリフォルニアのお店で見つけたボックス・セットは自分の人生の主要部分の伝記のようで、もし私のよう人間らしい少年が剛毅な人と感じることがあったとするなら、まさにこの時だった。
マレー・ヒル盤を編集している間、たくさんのオリジナル・グループ・メンバーに会うことができ、そのほとんどは楽しい経験だったが、おそらく最も楽しい場面は、出会った中で最も素晴らしい人の一人との出会いで、それは優れたキャディラックスCadillacsのアール・スピード・キャロルEarl “Speedo” Carrollとの出会いだった。
私の話しているオリオールズ・ボックス・セットは実は二重のパッケージング・ミスを犯し、それと同時にキャデラック・ボックス・セットを発売したのだが、念の入ったことには、写真一枚を入れたがライナー・ノーツを入れなかったのだ。
問題は、間違った写真を使ったことで、その写真の中にスピードがいなかったのだ!その後数年間にわたってスピードと知り合いになり、彼は物事に対し親切な紳士ではあったが、私の使った写真についてはいい気がしなかったことは分かっている。私はある晩、ニューヨークにあるこの準高級レストランに連れて来て、新しいキャデラックスのアルバムを発売し、カバーの目立つ要素として彼一人の写真を使うことを主に話した。私たちが古いキャデラックスの曲の話をしていると、何の前触れもなく「グロリアGloria」の演奏を始め、最初の2小節を歌った。周りのテーブルでは、混んでいたのだが、会話が直ぐに止まり、数秒後には辺り一帯から拍手喝さいが沸き上がった。スピードは最高の笑顔を見せ、私は感激で鳥肌が立つ瞬間を経験した。
周りを見渡すと誰もが微笑み、そもそもなぜ古いレコードを発売したいのかを思い出した。
このような思いからこの全集を編纂したのであり、これらの懐かしく素晴らしい曲を聞いたときに経験してほしいのは、この喜びなのだ。