最初にドゥーワップ・ボックス選集を編纂しようと決めた時、危険を冒しているということは分かっていた。この小冊子でビリー・ベラBilly Veraが書いた記事の中で指摘しているように、ボーカル・グループの好みは人によって違っていて、私たちの選曲によってほぼすべての人を激怒させることは最初から分かっていた。
たぶん最も驚いたことは、最初の厳選リストを『わずか』100曲のリストに削ることの難しさで、特にボックス選集の続編がないことを考えると、落とす曲を選ぶときに胃がキリキリ痛んだ。
私たちの目的は、創成期のオリオールズThe OriolesやレイブンズThe RavensのR&B(リズム・アンド・ブルース)バラードから、ロックンロールの全盛期の50年代中盤、そして、60年代、70年代、80年代の様々なリバイバルまで、ドゥーワップCD目録の幅広いサンプルを提供することだ。
本来入らなければいけない数曲は契約上の理由から入手できず、特にドミノーズThe Dominoesの「シックスティー・ミニッツ・マンSixty Minute Man」、ミッドナイターズThe Midnightersの「ワーク・ウィズ・ミー・アニーWork With Me Annie」、レイズThe Raysの「シルエッツSilhouettes」が挙げられる。
解説のために必要としていたものとしてアレイ・キャッツThe Alley Catsの「プディン・テインPuddin N’ Tain」、フォーシーズンスの多数の曲が心に浮かぶが、同じ理由から含まれていない。
しかし数曲を除き、ライノ・レコードRhino recordsのライセンス供与部の遠くまで及ぶ力のおかげで、選んだ曲を使うことができた。こういったことを考慮において選曲する数多くのガイドラインを決定した。
一例をあげるとデュエットが入っていないことに気が付くと思うが、比較的恣意的な決定によって、ソロ(または二人のソロ)シンガーではなくグループに脚光を当てたかった。確かに50年代中盤のR&Bデュエット・レコードの中にはドゥーワップとしての資格を持つものがあった(ジョニー・アンド・ジョーJohnnie &Joeの「オーバー・ザ・マウンテン・アクロス・ザ・シーOver The Mountain, Across The Sea」が典型的な曲の一つだ)が、グループというコンセプトから外れる。
例えば、コースターズThe Coastersはどの曲も入っていないし、ロックンロール以前の時代の最大のR&Bグループの一つであるクローバーズThe Cloversは1曲だけということにも驚くかもしれないが、彼らがいないのは、リズム・アンド・ブルースのボーカル・グループのレコードではある一方で、本当のドゥーワップの演奏ではないからだ。
ほとんど同じ理由から、一つの例外であるシャンテルズThe Chantelsを除いて「ガール・グループ」レコードを外した。
ルールはルールだが、アーリーン・スミスとそのクルーArlene Smith and her crewを外すわけにはどうしてもいかなかった。
最終的に、モータウンの曲入れないことに決めたのだが、その理由はそのほとんどが何よりも有意義な状況の下に再発売され、ほとんどすべてがドゥーワップ以降の時代にレコーディングされ、ドゥーワップよりいわゆるソウルのおかげで認められたからだ。とりわけ、テンプテーションズThe TemptationsとミラクルスThe Miraclesに対してここで謝罪する。