ザ・ドゥーワップ・ボックスThe Doo WOP Box Ⅰ
編集者より
ロックンロールのゴールデン・エイジからボーカル・グループの珠玉の101曲
数々のサウンドや音のニュアンスを伝えるために生み出されたが素晴らしい楽器はたくさんあったが、人間の声が伝えることのできるものに匹敵するものはなく、音楽的にシンクロさせる方法で3倍以上にすれば、その組み合わせにかなうものはない。ボーカル・グループのハーモニーは、宗教的であれ非宗教的であれ、黒人であれ白人であれ、男であれ女であれ、洗練されていようと純朴であろうと、ア・カペラであれ伴奏付きであれ、今までで最も驚くべきサウンドをいくつか作り出し、人気のある音楽表現方法がロックンロールだった世代やその次の世代にとって、ドゥーワップは主要なボーカル・グループの組み合わせだった。
ドゥーワップついでに言えば、『シュ・ボップ』、『ボム・ボム』あるいは『ウードリー・ポッパ・カウ』と言われていたということをあらかじめ言っておいた方が良いのだが、過去20年くらい、独特なオーラを漂わせていた。1950年代ロックンロールと一緒くたにされたため、その創成期には他の多くの音楽形態の陰に隠れていた。1955年以降にエルビスがロックに貢献したことを軽視しようとするのはばかげているだろうが、同様に当時の革命的な時代にボーカル・グループ音楽がティーネージャーに与えたインパクトを軽視することも同様にばかげている。たぶん、冷遇されていた理由の一つには、1970年代初期までドゥーワップという言葉が発生せず、主にニューヨークのDJのガス・ゴサートGus Gossertとその助手のウェイン・スティアールWayne Stierleが広めた。
ドゥーワップは全盛期にはリズム・アンド・ブルースとか、ロックンロールと呼ばれ、音楽の多重音声という点についてはほとんど区別がなされなかった。
そしてもちろん問題の一部は、むしろ音楽自体の定義のあいまいさによるものである。確かに私たちが今日『ドゥーワップ』という曲のほとんどに共通しているのはボーカル要素だが、このルールから外れてはいるが、まだこのジャンルにぴったり当てはまるレコードはたくさんある。最も良く言及されるのは、ボンボンなどという派手なバスの声、補助的で軽やかなバックに流れるソプラノかファルセット、そしてグループの残りの人が歌う3人かそれより多い補助的なハーモニーだ。歌詞はしばしば、子供ぽかったり驚くほど純朴で、歌詞の一部は意味のない発音で(たとえば、『ウードリー・ポッパ・カウ』)、一つか複数の楽器の代わりに使われている。しかしこの音楽を調べてみれば分かるように、非常にバラエティに富んだボーカル・テクニックやコンビネーションを使って、ドゥーワップの熱狂的なファンが大好きで『クラシックス』と呼ぶ曲をプロデュースしている。
ドゥーワップの起源、発達、成長、衰退、復興、維持の年表は、このパンフレットの他の場所に示されていて、それ自体がドゥーワップの歴史の概略であり、(ここに挙げた)数多くの素晴らしい本は、私たちが敢えてこのような企画をするよりも、このテーマをうまくカバーしているし、より多くの本が絶えず出版されている。ドゥーワップのことをあまりよく知らないということは無いと思うが、もし知らずにこのCD集を買ったのであれば、その歴史を簡潔に要約できる。