確かなことが一つある。エルビスは「もみあげを生やした不良」で、ペイオーラを必要としない。

レコーディングしていないレコードを125万枚売ることができるのだから必要ない。しかし調査によると、ほとんどの人たちがペイオーラ事件の脅威は小さく、少年非行の次に来ると考えていたにもかかわらず、センセーショナルな問題がメディアで注目されたために、政府で騒ぎが大きくなっていった。1月に、風刺作家で広告会社幹部のスタン・フレバーグStan Frebergが両面を使ったコメディ作品「ザ・オールド・ペイオーラ・ロール・ブルースThe Old Payola Roll Blues」を発売したのだが、このラジオ局が取り上げなかったことは明白だった。

![Stan Freberg – The Old Payola Roll Blues (Like The Beginning) – Vinyl (7", 45 RPM, Single), 1960 [r11380679] | Discogs](https://i.discogs.com/M8FvARCPdkRDqg7ZqIg_kA5kRx5vCIxb3hElUakMD90/rs:fit/g:sm/q:40/h:300/w:300/czM6Ly9kaXNjb2dz/LWRhdGFiYXNlLWlt/YWdlcy9SLTExMzgw/Njc5LTE1ODcwNDYw/NDUtMTI5OC5qcGVn.jpeg)

起訴を目前に控えたラジオ局は、心配でそれどころではなかったのだろう。この調査で最初の犠牲者が出た。連邦通信委員会委員の一人ジョン・ダーファーJohn Doerferは大手放送局チェーンから便宜を受けたことが明らかにされた。あらら。

このため、ラジオ局の無料レコード受領に関し、厳しい規則を策定することが公表されたのだが、それはばかげていると感じる業界人もいた。聞いたことのないレコードを買いに行く人間はいないし、レコードは聴ききれないほど、店頭に並べられないほど、たくさん発売されていたからだ。レコードは摩耗するので交換が必要だ。連邦通信委員会の措置は明らかに、必要以上の枚数のレコードを、レコ-ド会社が供給することをやめさせて、転売できないようにするものだが、それを守っているラジオ局はほとんどない。そしてこういうことがあった。連邦通信委員会委員長フレデリック・WフォードFrederick W. Fordは、下院議員のティップ・オニールTip O’Neillにメモを送った。

「アメリカの若者は精神的影響を受けやすいのだから、好ましくない官能的なタイプの曲から守られる必要がある」と激しく批判したが、ロックンロールの人気とペイオーラの間に関係があることを、確信をもって断ずることのできる情報を連邦通信委員会は有していない」と言及した。
不祥事が明らかにされなかった部分もあった。5月2日、ディック・クラークDick Clarkはフィラデルフィアで証言を始めた。


ある下院議員はこの証言を「せいぜい言い逃れだ」と述べた。クラークは、レコーディング、出版、印刷の権利以外に162の権益を握っていた。クラークによると、ジャミー・レコードJamie Recordsは、設立前の1957年にクラークが投資したレーベルで、ペイオーラを行ったが自身が受け取ったことは無いとのことだ。いずれにせよ、彼はその所有権を1959年に31,575ドルで売却したのだが、その理由は、この状態がいつまで続くか分からないし、150ドルに対して十分な見返りを得る機会だったからだ。クラークを追い詰めようとすればするほど、クラークは冷静にふるまった。クラークがアメリカン・バンドスタンドAmerican Bandstandを制作していた時、パートナーのトニー・ママレラTony Mammarellaは、電話1台を挟んで向かい合ったデスクで働いていたが、トニーのペイオーラに関する行動はすぐ近くにいても何も知らなかった。


ママレラは、音楽業界で築いてきた人脈やビジネス関係を手放すよりも、仕事を辞めることを選んだ。他のDJ(アラン・フリードAlan Freedと言われた)がたった25万ドルの利益しかもたらしていなのに、ずっと厳しい宣誓供述書に署名せざるを得なくなり、その結果ABC・レコードはそのDJを解雇したのに対し、ABCネットワークに1200万ドル儲けさせたのだから、ペイオーラ防止宣誓供述書に署名することができたかどうかを、下院議員がクラークに質問した。


クラークはそれを否定して、目の前に提示されればいかなる宣誓供述書にも署名すると答えた。証言の二日目、クラークは下院議員に、自分に金儲けの機会が提示された時にそれを利用したし、そうすることで『ゲームのルール』に従っただけだと言った。確かにペイオーラは存在したが、受け取ることとは異なり、お金を渡すことはペイオーラではないと思っていたし、受け取ってもいなかった。そして、宣誓供述書に署名する前に、自分にかかわる利害関係をすべて断ち切ったと宣誓した。下院調査委員会委員長のオーレン・ハリスOren Harrisは、納得してクラークに言った。

「君は魅力的で成功した若者だ。自分のしたことが悪いと分かっているが、このシステムによって作り上げられた人間であって、責任はない。大勢のティーンエイジャーの聴衆にレコードをかけることによって、ポピュラー音楽の分野で、極めて多くの要素をコントロールするという特別の機会を利用した。」これはこれで終わった。
