サム・フィリップスは、頭がくらくらしていたに違いない。

一応ジェリー・リーはビルボード誌に自己弁護の全面広告を出したが、サムがお金を出し代筆もした。


「ハイ・スクール・コンフィデンシャルHigh School Confidential」はまだ売れていたものの、ディック・クラークは、彼を二度と出演させることは無いとオスカー・デイビスOscar Davisに通告したが、「これはとても卑怯な行動で、それ以来ずっと申し訳ないと思っている」とクラークは自伝で打ち明けた。

しかし、サムは別の悩みを抱えていた。カール・パーキンスCarl Perkinsとジョニー・キャッシュJohnny Cashがコロンビアと契約し、エバリー・ブラザースThe Everly BrothersはエイカフローズAcuff-Roseとの大型出版契約をオービソンに求めたので、サムはロイ・オービソンRoy Orbisonを手放した。




その結果、サムの抱えるスターの数は少なくなっていた。ハロルド・ジェンキンスHarold Jenkinsは、サン・レコードで何曲かレコーディングしリリースされないままになっていたが、この夏、バーノン・ダルハートVernon Dalhartの先例に倣って、テキサスにある二つの町を一緒にしたステージ・ネームを付け、コンウェイ・トゥエッティConway TwittyとしてMGMから出した「イッツ・オンリー・メイク・ビリーブIt’s Only Make Believe」が大ヒットになった。



サムの名誉のために言っておくと、別のスターを育てるまではジェリー・リーしかいなかったので、ジェリーから離れなかったのである。少なくともしばらくの間は。
