たぶんチャック・ベリーのドキュメンタリー・タッチの作詞に影響を受けて、ロックンロールの歌詞は男女のドラマ以外のシチュエーションに入り始めたが、男女のテーマ自体は衰退したわけではなかった。
アメリカは景気後退に入ったのだが、それによってこの年最初のビッグ・ヒットが生まれた。シルエッツThe Silhouettesはフィラデルフィアのボーカル4人組でとても才能が有ったので、ちっぽけなジュニア・レーベルJunior Recordsが彼らにチャンスを与えることは問題なかった。彼らの曲「ゲット・ア・ジョブGet a Job」は、厳しい歌詞、巧みなハーモニー、足を踏み鳴らし手拍子をする間奏が結びついて、すぐに飛ぶように売れた。
![]()
ディック・クラークDick Clarkはそれを聞くと気に入ったのだが、アメリカン・バンドスタンドAmerican Bandstandは全国放送なので、全国で販売していないレコードはかけないという厳しいルールがあった。
![Various - Dick Clark - All Time Hits Vol.2 [45rpm 7inch EP,w/PS] – NIGHT BEAT RECORDS](https://newsfeed.time.com/wp-content/uploads/sites/9/2012/04/dick_clark.jpg?w=600)

しかし、ニューヨークのヘラルドエンバー・レコードHerald-Ember Recordsは、以前からヒット曲(ファイブ・サテンズThe Five Satinesの「イン・ザ・スティル・オブ・ザ・ナイトIn the Still of the Night」)があり、ジュニア・レコードJunior recordsからそのレコードを買っていた。

![The Five Satins – In The Still Of The Nite / The Jones Girl – Vinyl (Monarch Pressing, 45 RPM, 7", Single), 1956 [r2574258] | Discogs](https://i.discogs.com/-mQGaZ3cQ4Da6NhjJdSkYnFGZs4HTCjHqoMGehk69tY/rs:fit/g:sm/q:90/h:599/w:600/czM6Ly9kaXNjb2dz/LWRhdGFiYXNlLWlt/YWdlcy9SLTI1NzQy/NTgtMTM3OTk5NzEz/OS0yNDAxLmpwZWc.jpeg)
クラークは、それがエンバーから販売されていることを知るとすぐさま放送したのだ。エンバーの社長アル・シブラーAl Silverの話では、「クラークがレコードをかけた翌朝オフィスに行くと、50万枚という大量のレコード取り寄せ注文の電報があった。…結局、このレコードは200万枚売れた。」この一枚のレコードにいったい何があったのか?非常に簡単。仕事を求めるティーンエイジャー(おそらく黒人男性)の苦労だ。他にもある。「家に戻ると、母ちゃんが言うんだ。説教と鳴き声。仕事のことで、俺が嘘をついていると言うんだ。見つけられなかったんだと。」親は分かっちゃいないんだよね。そこでリーバーLeiber&ストーラーStollerはコースターズThe Coastersに異国風のものを提供する(二人は「ザ・アイドル・ウイズ・ザ・ゴールデン・ヘッドThe Idol with the Golden Head」で、大した成果を出せないと思われていた)ことをやめて、今までで最高のヒット曲「ヤックリー・ヤックYakety Yak」を書いた。



この曲は、よその家のティーンエイジャーの子にまで小言を言う内容で、家事を言いつけ、宿題を思い出させ、こう言いつける。「外にいる不良友達に言いなさい。乗る時間はないよ。」「ガミガミうるさいな。」「口答えするんじゃない。」ひどく辛辣で、ニューヨークの新しいスタディオのスター、カーティス・オースリーCurtis Ousley(別名キング・カーティスKing Curtis)が奏でるすごいサクソフォンでさえ、和らげることはできなかった。

