そのシングルをリリース後、オプリ出演前のある時点で、エルビスはテネシー州べテル・スプリングで演奏した時、バンドを組んでいた3人兄弟が見に来た。
彼らはエルビスのことを噂で聞いていたし、少なくともそのうちの一人はラジオでエルビスを聞いたことがあった。妻がその男に聞かせ、「まるであなたみたいに聞こえるわ」と言った。そしてその男も、ブルー・ムーン・オブ・ケンタッキーが演奏されている時、本当にそうだと思った。パーキンス兄弟は1946年にコットン・ボールthe Cotton Bollというコンサート会場で、演奏できる仕事を何とか獲得して以来、そんな風に音楽を演奏していたのだ。カール・リー・パーキンスCarl Lee Perkinsは、エルビス・プレスリーより3歳年上で、結婚し、子供もいた。カールと、クレイトンClayton、ジェイJayの兄弟は綿農場で働いていたが、そこから這い上がって、ホンキー・トンクと呼ばれる安酒場で夜になると演奏をしていた。
カールは6歳の時、両親にギターをせがんで、綿農場でパーキンス一家と一緒に働いていた黒人のジョン・ウェストブルークおじさん”Uncle” John Westbrookから、演奏を学んだ。実のところ、パーキンス家は人種統合があまり進んでいないエリアに有り、過酷な状況で綿花を小作する貧しい人々の生活する場所にいた。中には黒人もいたし、白人もいた。カールは、父親が毎週欠かさず聴いていたオプリで演奏することを決心したのだが、自分で聴いた音楽をまねしようとしても、あまりうまくいかなかった。
カールはジョンおじさんの手法がとても好きだったので、自分の演奏方法に影響していた。もちろん、それはパーキンス兄弟の成功のカギとなった。兄弟は他の多くのバンドよりリズミカルで、みんなは踊り出したのだった。そんなことが起こったのは、カールがクレイトンにベースへ代わるよう説得し、演奏テクニックを実際にやって見せ、ベース・ネックの周りで弦が跳ねた時だった。ベース音だけでなく、リズミカルなパチンという音が鳴った。少しずつ、パーキンス兄弟はうまくなり、最後にはフルーク・ホランド（まぐれ当たりのオランダ人）”Fluke” Hollandという名前の男をメンバーに入れた。
その男は、クレイトンのベースを引き立てるようにドラム・スティックを叩き、兄弟の作ったリズミカルなインパクトをより強めた。