第10章
ロックンロール誕生の一翼を担った独立系レコード・レーベル(インディーズ)
「50年代はずっと成功していて、何をしてもうまく行っていた」。
フィル・チェスPhil Chess、チェス・レコードChess Records 1994年
第二次世界大戦後まもなく、アメリカにおけるリズム&ブルースの人気の高まりに対応するため、独立系レコード会社がスタートした。デッカDecca、RCA、コロンビアColumbia、マーキュリーMercuryといった大手レコード会社は、儲かる市場とは考えられなかったので、マイノリティの音楽(黒人も例外ではない)のレコーディングを拒否した。これらの大手レコード会社は、アメリカにおけるリズム&ブルースの台頭に対応する準備ができていなかったため、クリエイティブで起業家精神に溢れた独立系レコード会社に、自分たち大手レコード会社が最大限に利用できる機会を与えてしまったのだ。多くの大手レコード会社は、やがて50年代後半までにロックンロールのレコーディング・ビジネスに参入することになるが(ドゥーワップの歴史を参照)、独立系レコード会社に対抗する意欲も関心もなかった。南部の若い白人ロカビリー・ミュージシャンは、アメリカ中のメジャー・レコード会社から引っ張りだこだった。彼らは白人だったので、革新的な音楽を録音してくれるレーベルを見つけるのに問題はなかった。RCA(エルビス・プレスリーElvis Presley)、
コロンビアColumbia(マーティ・ロビンスMarty Robbins)、
ABCパラマウントABC Paramount(Cadenceの誤りと思われる) (エバリー・ブラザーズEverly Brothers)、
リバティLiberty(ジョニー・バーネットJohnny Burnette)、
デッカDecca(ビル・ヘイリー&ヒズ・コメッツBill Haley and His Comets)といったレーベルは、50年代半ばのロカビリー爆発期に、熱心にこれらのミュージシャンをレコーディングした。
ブランズウィックBrunswick(バディ・ホリーBuddy Holly、クリケッツThe Crickets、ジャッキー・ウィルソンJackie Wilson)や
ルーレット・レコードRoulette Records(バディ・ノックス&ハートビーツBuddy Knox and The Heartbeats)といったいくつかの独立系レーベルは、50年代半ばに若い白人ティーンエイジャーが求めていたこれら2つの音楽ジャンルを利用した。
これらのインディペンデント・レコード・レーベルは、移民してきた白人起業家ビジネスマンによって設立され、黒人のロックンロール・ミュージシャンに門戸を開き、彼らの才能を全米に披露する機会を与えた。以下のインディペンデント・レーベルは、まさにロックンロール誕生の重要な一部である。