ベテランで好調だったのはリッキー・ネルソンRicky Nelsonだけではなく、インペリアル・レコードImperial Recordsは、1年5万ドルを約束したファッツ・ドミノFats Dominoとの契約をABCパラマウントABC-Paramountに売却し、ファッツを直接ナッシュビルに送って次のレコードの録音をさせた。
新たに信仰から距離を置いたリトル・リチャードLittle Richardは、マーキュリー・レコードMercury recordsではゴスペル・ミュージックがあまりうまくいかず、アトランティックの移籍したものの、シングルを1枚出した後すぐに消えた。
ジェリー・リー・ルイスJerry Lee Lewisはレコード・レーベルの移籍を検討中であると発表して、マーキュリーMercuryに移籍し、子会社のスマッシュ・レコードSmash recordsに所属した。
一方、チャック・ベリーChuck Berry(いつまでも決着のつかない裁判事件のせいで、非常にデリケートな状態にあった)は「トーキン・アバウト・ユーTalkin’ About You」をリリースしたが反応はなく、エルビス・プレスリーのシングル「ワン・ブロークン・ハート・フォー・セイルOne Broken Heart for Sale」は、初めてトップ・テンの近くまで行かなかった。
エルビスは次の映画作りに忙し過ぎて、広報活動ができなかったのだろう。
モータウンは楽しく過ごしていた。1963年、商業活動用のレーベルを設立し、そこでスター養成所の多くが象徴的なヒット作品をレコーディングした。マーサとバンデラスMartha and the Vandellasのデビュー曲がこの年の皮切りになり、ミラクルズthe Miraclesは「ユーヴ・リアリー・ゴット・ア・ホールド・オン・ミーYou’ve Really Got a Hold on Me」でチャートに載り、マービン・ゲイMarvin Gayeは春に「プライド・アンド・ジョイPride and Joy」で登場した。
モータータウン・レビューthe Motortown Revueはツアーの旅に観客を感動させたので、シカゴのリーガル・シアターRegal Theaterでの講演では、とてもたくさんの人がチケットを欲しがり、ショーを1日3回ではなく4回開催した。
スティービー・ワンダーStevie Wonderは、自身のアルバム「ザ・ジャズ・ソウル・オブ・リトル・スティービーThe Jazz Soul of Little Stevie」に「フィンガー・チップスFingertips」というインストゥルメンタルをレコーディングし、レビューにおける自分の持ち時間のフィナーレとして、スタディオ・ミュージシャンを減らして演奏したところ、観客は大混乱になり、彼のまねはできるものではない。
この曲が大成功だったと聞いたベリー・ゴーディBerry Gordyは、3月に、可動式録音機材をレビュー・ショーに持ち込んだのだが、スティービーのヒット曲になるだろうとゴーディ―が思ったのだろう。録音時間がとても長くなったので結果的に二つのパートに分けなければならず、レコードの両面に1パートずつとし、注目を集めたのはパート2だった。
スティービーは観客に一緒に演奏するように勧めて、「メリー・ハダ・リトル・ラムMary Had a Little Lamb」の部分をハーモニカで吹き、ゆっくりとステージから離れるのだが、戻ってくるかもしれないとじらした。ショーはすでに時間を過ぎていて、次はマーベレッツthe Marvelettesの番だったので、スティービーのベース演奏者はもうプラグを抜いて、マーベレッツのベーシストのジョー・スイフトJoe Swiftは、案の定、スティービーが歩き出した途端、がんがん演奏を始めた。バンドはリフを演奏し始め、スイフトSwiftが「どのキーだ?どのキー?」と聞いたのが聞こえ、全体がさらにもう一つのクライマックスへと盛り上がっていった。
宣伝がうまくいって「ザ・フィンガーティップス・パート・トゥーFingertips, Part2」は、ポップとR&Bのチャートでトップになり、18か月前のマーベレッツ以来のモータウンのリリース曲となった。
イケイケどんどんで、シュープリームスthe Supremesはスモーキー・ロビンソンSmokey Robinsonの曲「ア・ブレス・テーキング・ガイA Breath Taking Guy」を試したが、なぜかポップ75位どまりで、消えてしまった。
いったい、ヒット曲は出るのだろうか?ところが6月中旬、マーサとバンデラスMartha and the Vandellasは、ホランド・ドジャー・ホランドの手助けで、その扉を開き、やってくる夏を「ヒート・ウェーブHeat Wave」でもっと暑くして、トップ・テンの大ヒットにした。