この晩のバンドは、ジャガーJagger、リチャーズRichards、ジョーンズJones、ディック・テーラーDick Taylor、イアン・ストゥワートIan Stewartで、ドラムはミック・アボリーMick Avoryだった。
誰もその晩のことをほめて書き立てなかったようだ(書くわけはないだろう)が、バンドは盛り上がった印象を持った。間もなくして、ミック、ブライアン、キースはチェルシーの中で低所得層向けのエディス・ロード102番地102 Edith Road in Chelseaでアパートを共有し、アパートはジェームス・フェルジJames Phelgeという男と一緒だったが、この男は理由はわからないが、「ナンカーNanker」と呼ばれていた。
彼らは角にあるウェザービー・アームスthe Weatherby Armsというパブで練習していた。彼らは仕事を探していなかったので、住むところがあって幸いだったが、マンハグ・ブルース・バンドthe MannHugg Blues band(と、ポール・ジョーンズPaul Jonesと名乗って演奏していたポール・ポンドPaul Pond)とブルース・バイ・シックスBlues By Sixというグループは探していた。
彼らはチャーリー・ワッツCharlie Wattsに加わってほしいと懇願していた――彼らはほとんどの時間をドラマー抜きで練習していた――が当人は慎重だったのだが、その主な理由は、ブライアンが予測できない行動をとるからで、ジャズの仲間内では、汚い、だらしないという風に見られていることが不満だった。
リバプールの状況は混とんとしていた。モナ・ベストMona Bestはビンセント・ローグ・ベストVincent Rogue Bestを7月21日に出産し、ジョン・レノンJohn Lennonのガールフレンドのシンシア・パウエルSynthia Powellは妊娠したことに気が付いた。
恐れたシンシアはジョン・レノンとひざを交えて、そのニュースを伝えたが、長い沈黙の後、「それに関して一つだけある。シン、僕たちは結婚しなくてはいけない。」と言った。シンシアの母親は、この上なくジョンのことが嫌いで8月22日、キャバーンでグラナダ Granada TVが撮影する日にカナダに出向する予定だった。
ブライアンは戸籍係に23日の予約を取った――しかし、ドラマーはおらず、ジョン・レノンにはもうすぐ子どもができようとしている――が、シンシアも含めて誰もが、子供ができたことや、ビートルズがらみの結婚について話すことは禁じられていることは、わかっていた。しなければいけないことは、ピートPete Bestが署名し、ブライアンが有給の雇用にしたパートナーシップ合意書からピートを法的に離脱させることだ。
しかしブライアンBrian Epsteinには考えがあった。
リバプールに誕生しているたくさんのグループの一つにマージー・ビーツthe Mersey Beatsがいて、なかなか良いティーネージャー集団で、そのドラマーが離脱したのだ。
ブライアンはピートに会って、ドラマー件リーダーとして即座に採用のオファーを出せると話した。ブライアンは8月14日火曜日、バトリンに電話し、リンゴRingoを呼び出すように頼んだ。
リンゴが出ると、ブライアンはビートルズに参加するかどうかを尋ね、リンゴはイエスと答えた。今晩リバプールに戻って練習できるかと尋ねると、いや、知らせなければならないので日曜日に行くといった。ピートとの打ち合わせは木曜日にセットしてあり、容易ではなかった。ブライアンはビートルズの実情を説明したが、それは、ビートルズはピートを力量不足と考え、EMIは次のセッションにピートはいらないということだった。
ピートは納得せず、出ていくときに、玄関でマージー・ビーツThe Mersey Beatsを通り越した。彼らはまだ話に上っていない。ブライアンは自分のオフィスに入り、今はマージー・ビーツと会えないといった。最終的に、ビートルズとの契約の見直しをして、ピート・ベストPete Bestをリチャード・スターキーRichard Starkeyの名前に差し替えることを弁護士に依頼した。ピートはビートルズに会う考えには我慢できないのでニールNeil Aspinallと一緒に大酒を飲みに行きたがったが、解雇になったのはピートだけで、自分は解雇になってないと言い、ビートルズはその夜コンサートがあったので、ニールは酔っぱらうわけにはいかなかった。
ニールに会えたことでビートルズはほっとしたのは明らかだったが、同様に土曜にリンゴが午後の練習のためにキャバーンに現れたことにもほっとした。ポート・サンライトのハルム・ホールHulme Hallにおけるその夜のコンサートは、年1回の植物協会のショーの間に行われた。
ドラムのセッティングについてニールとの間でちょっとしたいざこざがあった(ピートはいつも自分でセット・アップしていたのでニールはやり方を知らなかった)後、ビートルズは初めてリンゴと舞台に上がったところ、ビートルズのサウンドは、はるかに、はるかに良くなった――出演しているほかのミュージシャン、ファン・クラブの秘書のボビー・ブラウンBobby Brown、みんな気が付いた。そして、水曜日に、グラナダTVがテレビ用に撮影した。