もしこれがつまらない話に思えるのであれば、公民権運動は全国的関心を集めたばかりで、レコード業界の黒人重役は他の黒人ビジネスマンに劣らず、アメリカン・ドリームに加わるために戦っていた。ベリー・ゴーディBerry Gordyは確かにそうで、誰もがシレルスthe Shirellesに注目し、誰もがガール・グループを欲しがった。
デトロイトには人気者になりたい歌手が大勢いたので、ゴーディは何かを発見できると確信し、思った通り、見つけたのだった。スタディオをぶらつく子供たちがいつもいて、プリメッツthe Primettesというガール・グループが、ルーピン・レコードLupine recordsという地元の小さなレーベルでレコードを作った。
ここでこのグループはタムラ・モータウンTamla-Motownに行きたかった。
ベリーは最初それを勧めなかった―「君たちはまだぶらついているの?」というのが、彼女らへのお決まりの挨拶だった。―が、ソングライターのブライアン・ホランドBrian Hollandとフレディ・ゴーマンFreddie Gormanは、郵便局員でヒッツビルHitsvilleをぶらついて曲を書き、少女たちが歌える曲「アイ・ウォント・ア・ガイI Want a Guy」を持っていたので、ある日この少女たちがゴーディを捕まえ、聞いてもらった。
ゴーディは相当に興奮したので、ホランドとゴーマンがすでに作ったものに多少手を加えてレコーディングを決めた。一つ問題があり、グループの名前を決めなければならない。リストが作られ、結局女の子の一人フローレンス・バラードFlorence Ballardが、その中からシュープリームスthe Supremesを選んだ。
彼女らは「アイ・ウォント・ア・ガイI Want a Guy」をレコーディングしたが、跡形もなく消え去った。
彼女らは再び、べたべたした、しょっぱい、油っぽいおやつをタイトルにした「バタードゥ、ポップコーンButtered Popcorn」で挑戦したが、フローレンスが歌うのを聞いて、他のことを考えても良いと思ってしまうのだった。
ゴーディはこの曲の共作のクレジットに載っているが、B面が推薦できると急いで発表しており、それは「フーズ・ラビン・ユーWho’s Lovin’ You」という、パッとしないスモーキー・ロビンソンのナンバーで、ダイアン・ロスDiane Rossという別の女の子が歌っていたが説得力がなかった。
今度はゴーディも心を乱されに違いないが、次の一手は別のレーベルで2軍のような、ミラクル・レコードMiracle recordsをスタートさせることであり、最初に契約したのは、プリメッツthe Primetsの別の半分の男性チームで、かつてのプライムズthe Primes、現在はテンプテーションズthe Temptationsとして知られている。
ゴーディは、「もしそれがヒットしたら、ミラクルだ」と言うのだから、あるレーベルをミラクルと言う音楽業界の使い古されたジョークを聞いたことがないはずだ。しかし、郊外のインクスターにあるある高校の進路指導教員が数名の女子たちをヒッツビルHitsvilleに送り込んできたときにゴーディは注目した。彼女たちはインクスター・ハイ・スクールInkster High Schoolのタレント・コンテストで負けはしたが、指導員は、とにかくオーディションの価値があると考えた。彼女たちは良く思えたが、レーベル側はオリジナルを主張したので、彼女たちが書き始めた草案を提出し、ブライアン・ホランドBrian Holland とロバート・ベイトマンRobert Batemanが、それに取り掛かって、最終的に郵便局員のフレディ・ゴーマンFreddie Gormanを呼び込んだ。
その結果出来上がったのが「プリーズ・ミスター・ポストマンPlease Mr.Postman」で、ガール・グループへの期待は高まり、ブライアン・ホランドBrian Holland、ロバート・ベイトマンRobert Batemanの最初の制作物となった。
グループの名前はまたもや、ケイジンイェッツthe Casinyetsからマーベレッツthe Marvelettesに変更しなくてはならなかった。
このレコードは、間もなくヒットしてR&Bとポップの両チャートで1位になり、ヒッツビルにとって初めてのことだった。