子供はもっと活気のある曲をどうやら好むらしく、リトル・リチャードは4月に両面ヒットさせ、ロング・トール・サリーLong Tall Sally、B面はスリッピン・アンド・スライディンSlippin’ and Slidin’で、熱狂的なだけでなく、変わっていた。
A面の歌詞はリチャードのゲイ・バーの演奏から生まれたことは十分考えられる。ジョンおじさんは、好みの体つきをした女と、メアリーおばさんに隠れていちゃいちゃしてる。彼は続いて、リップ・イット・アップRip It Up、B面はレディ・テディReady Teddyという、アップ・テンポの曲を2曲出した。(これで彼はロックンロールをやるつもりだと宣言した。)
ファッツ・ドミノは、ファット・マンFat Manとほぼ同じくらいアップ・テンポのアイム・イン・ラブ・アゲインI’m in Love Againで、トップ・テンの上位に最終的に食い込んだ。
しかし、このレコードのB面は、昔のスタンダード曲、マイ・ブルー・ヘブンMy Blue Heavenという大ヒット曲の前にヒットした。
ファッツは年末までスタンダードを連続して出し、最初は、フェン・マイ・ドリームボート・カムズ・ホームWhen My Dreamboat Comes Home、秋にはブルーベリー・ヒルBlueberry Hillを出したが、ドミノにあまりにぴったりの曲だったので、この曲が1940年のグレン・ミラーのレコードに遡ることが分かった人はほとんどいなかった。
プラターズも題材をスタンダードに頼ったアーティストで、1956年のヒット曲、グレート・プリテンダーGreat Pretenderは、彼らの親分バック・ラムBuck Ramが書いた曲だったが、次のヒット曲、マイ・プレーヤーMy Prayerは数十年前の曲だった。
しかし、チャック・ベリーChuck Berryは何が必要かを分かっていて、夏の初め、4月にレコーディングした楽しく挑戦的なレコードをチェスがリリースし、ティーネイジャーだけの居場所を主張した。「ベートーベンをぶっ飛ばせ」Roll Over Beethovenは1956年のロックンローラーの世界を完全に描いた。
自分の好きな曲をラジオで聞きたいのに、誰もが自分の音楽を認めてほしいけど、自分とラジオの間に立ちはだかって邪魔をする大人たちのくだらない曲にイライラしてた。その通りだし、それは彼が誰にでも聞いてほしかった「リズム・アンド・ブルース」だったが、子供たちには彼の言いたいことが分かっていた。彼は子供の中の一人ではなかったが、子供たちの世界を利用することができていた。彼の次のレコードは、トゥー・マッチ・モンキー・ビジネスToo Much Monkey Businessで、ティーネージャ―達が就いていた卑しい仕事の欲求不満を表現していた。
しかし、彼の次のレコードは、それや、「ベートーベンをぶっ飛ばせ」と一緒のセッションで録音されたが、全く別物だった。ブラウン・アイド・ハンサム・マンBrown Eyed Handsom Manという曲は、タイトルの男を理想としていて、たまらないほど魅力的な男だった。
ミロのビーナスはその男のためにレスリングの試合に勝とうとして両腕を失った。女たちは這って砂漠を渡り、その男のところまで行こうとした。裁判長の妻は流浪の罪を放免してくれるように嘆願した。それはベリーにとって普段通り、滑稽で、直接的で、辛らつだった。その男は失業の罪で捕まったのだ。そして、誰もはっきり言わないのだけど、その男をたまらないほど魅力的にしているのは、その男の茶色い瞳だったのか?
ますます多くの人がこんなことを自分でやりたかったが、優位な人もそうでない人もいた。もしボーカルグループになりたくて、そのメンバーに才能が有り、誰かが聞いてくれれば、それはかなり簡単だ。しかし、白人の若者にとって望むのはエルビスになることだ。それはずっと難しい。西テキサスの出身のロイ・オービソンRoy Orbisonは、油井労働者の息子で、故郷の名前にちなんだウインク・ウェスターナーズWink Westernersというバンドに何年もいた。
エルビスに会ったとたんに、ティーン・キングスTeen Kingsになった。
1955年、ロイはフォート・ワースの北、デントンの北テキサス州立大学に通っていて、そのクラスメートの一人がパット・ブーンでレコード制作を始めていたが、カントリー音楽の大御所の娘と結婚していた。
パットの妻はランディ・ウッズRandy Woodsの娘で、パットがレコーティングしたのは、ランディのいたドット・レコードDot Recordsだった。
大学の無料コンサートで二人の学生、ウェード・ムーアWade Mooreとディック・ペナーDick Pennerが、ザ・ウービー・ドゥービーThe Ooby Doobyを演奏するのを聞いて、ティーン・キングズTeen Kingsに教えた。